人を生かして戦い抜いた戦国武将の一生|「武士道 鍋島直茂」近衛龍春 著

歴史小説

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こんにちは、つれづれ(@periodnovels)です。このブログでは、実在した人物や出来事を元にした小説を紹介しています。

このブログは「日々のおともに手に汗握るもう一つの人生を」をテーマに、実在した人物をベースとした小説をご紹介しています。

今回ご紹介する小説は、近衛龍春 著「武士道 鍋島直茂」
描かれる人物は、戦国時代の肥前で活躍した戦国武将鍋島直茂(1537-1618)」
本作のテーマを一言にまとめると…

人を活かし活用することの大切さ

武士道というのは、死ぬことに尽きると会得しました。死ぬか生きるか二つに一つという場合には死を選ぶということです。別段難しいことではありません。腹を据えて進むだけのことにて、死に急ぐことではありません。死を覚悟して物事に当たるということにございます。

近衛龍春 著「武士道 鍋島直茂」P466

鍋島直茂は、主である龍造寺隆信の方針「疑わしきは罰する」ではなく、「人を生かして使う」ことで主君亡き後の肥前(現:佐賀県と長崎県の一部)を静謐に導きました。後に葉隠れ武者は、三島由紀夫や隆慶一郎に愛されたといいます。
周囲とのコミュニケーションの円滑さや、人の上に立った時に、部下を生きいきと使うためにはどのような行動をするべきか、人を使うことの教訓を得ることができる作品です。

おすすめポイントの前に簡単にあらすじをご紹介…

戦国時代後期から江戸時代前期(1550年代~16218年まで)の肥前国(現:佐賀県と長崎県の一部)を舞台に、戦国武将 鍋島直茂の生涯(15歳くらいから亡くなるまで)を描いた作品です。

なお、著者 近衛龍春の作品は本格的な歴史小説が多く、状況説明や端役の説明と細かく慣れていないと内容が入ってきにくい方もいるかと思います。本作は少し身構えてじっくりと読書される方に向いている作品です。(ライトに読みたい方にとっては少し重いかもしれません)

「鍋島直茂」はこんな人

鍋島直茂は、肥前における国衆で後に戦国大名に成長した龍造寺家に仕える鍋島家の次男に生まれます。少年期に龍造寺隆信の小姓として近侍したのちに、戦の先駆けや外交をこなしていくことで頭角を現し、隆信の右腕として采配を振るいます。隆信の死後は、秀吉に認められることで、実質的に龍造寺家を乗っ取り、国主(藩主)の座についた人物です。
本作では、戦に真っすぐに立ち向かう勇気と知恵のある人物ながら、主である龍造寺隆信との対比で「人を生かして使う」ことで成り上がった人物として表現されます。

おすすめポイント・読みどころ

鍋島直茂の鮮やかな立ち回りと人遣い

直茂の主である龍造寺隆信は「背信した者や、疑わしき者には非情ながら、恩ある者には情が厚い。起伏の激しいお方」。出る杭は打たれる世の習いを警戒し、家臣筆頭の直茂は周囲からの嫉妬や恨みを買わないよう気を遣います。
周囲とうまくやるためのコミュニケーション術であり、現代においても必須な能力のひとつではないでしょうか。

突出すると嫉妬を受けるので、信昌(鍋島直茂)は首を横に振る。龍造寺家をうまく纏める術でもあった。

近衛龍春 著「武士道 鍋島直茂」P168

また、直茂は人を使う才能にも長けています。それは、適材適所のような人を見抜く才能というより、部下同僚とのコミュニケーションで真価を発揮していきます。時になだめ、時に現実を知らしめることで、巧みに部下を、同僚を遣うことで肥前を纏め上げていくのです。
印象的な嫡男 勝茂の初陣のシーンでは、息子にお見事と言われながらも、慢心せずに大将たる者のあるべき姿を伝えています。このほかにも憤りを感じながらも同僚をなだめるシーンなど、直茂がいかに周囲に気を遣いながら国主としての座に着いたのかが垣間見えるのです。

儂ではなく、褒めるのは家臣じゃ。雑兵の真似を続けず、家臣たちに指示を出せ

近衛龍春 著「武士道 鍋島直茂」P01

あとがき

主を失った後、結果的に主家を乗っ取った形となったため、鍋島直茂は人によっては評価や印象が変わる人物です。しかし、40年近く主に仕え続けることで直茂個人の力量を高め、主君や周囲からの信頼を勝ち取ったからこその結果ともいえます。
決して運よく転がってきたのではなく、努力を積み、周囲との和に努めたからこそ得た結果であり、まさに「人事を尽くして天命を待つ」の典型とも言えます。人を生かして使うことの大切さだけでなく、努力することの大切さを合わせて感じられる作品です。

関連作品

「妙麟」赤神諒 著
舞台を同じく戦国時代の九州を描いた作品です。武士道 鍋島直茂にて描かれる沖田畷の戦いで勝利した島津軍が大友家(大分県を支配する大名)に攻め込みます。大友家の吉岡妙林には、鶴崎城をどのように守り抜いたのか。戦国時代に翻弄されたもう一つの人生をお楽しみください。

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