2023年を振り返り… 今こそ読みたい本6選

おすすめ小説

もうすぐ2023年が終わり、2024年を迎えようとしています。コロナの収束、スポーツでの躍進などの明るいニュースから、不祥事や続く戦争などの哀しい出来事まで、今年も様々な出来事がありました。

みなさんの2023年はどのような1年でしたか?

今年、2023年に『小説好きの読書案内』でご紹介した数々の本の中から、今年を振り返り、来年に向けて読みたい小説を3つと、本ブログで紹介した今年のつれづれベスト3(個人的なベスト3)の計6作をご紹介します。

テーマ別 Best

挑戦した人におくる一冊

挑戦。ここでは何かしらの新しいことや経験のないことに取り組んでみることを意味しています。それは新しい趣味を始めたでもよし、転職・結婚・家族が増えたなどの人生の転機でも。特に今年2023年は、数年ぶりにコロナ禍が収束し、よくも悪くも生活スタイルが変わった方も多いのではないでしょうか。

2023年、何かに挑戦した方へおくる一冊は、「わが殿」畠中恵 著

舞台は、江戸時代後期から幕末・明治初期にかけて、全国各地の藩が借金にまみれる中、たった4万石の小藩ながら財政再建を果たした越前大野藩。財政再建の旗頭に任命された、中程度の家柄の内山七郎衛門(良休)は、恐ろしい藩主:土井利忠の無茶ぶりに応えつつ、大野藩を豊かに変えていきます。

主人公:内山七郎衛門(1807-1881)が、慣れない財政再建という仕事、他の家臣からの嫉妬、次々に振って来る藩主からの無茶ぶりなど、いくつもの壁にぶつかりながら、仕事に挑戦していく姿を描きます。主君:土井利忠と家臣:七郎衛門の間で少しずつ築かれる絆、そして激動の時代に求められた「才能」とは何なのか。希望も絶望も運んでくる「明日」という印象的な言葉から、挑戦する自分自身の「明日」に光が差し込んでくる作品です。

努力した人におくる1冊

努力。というと大げさかもしれません。単に今年も仕事を頑張ったなぁとか、日々の生活を守り切ったなぁとか、そういうのでいいと思うのです。

2023年、何かに努力した・頑張った方へおくる1冊が、「朝星夜星」朝井まかて 著

舞台は江戸幕末から明治初期。長崎で日本初の本格的な西洋料理屋 自由亭を開業した「草野丈吉(1839-1886)」と「妻:ゆき」を描きます。二百年超続いた鎖国が終わり、外国に開かんとした時代、彼らは食の力をもって、日本の底力を見せようと夫婦二人で努力を重ねます。

本作のポイントは、草野丈吉の視点からではなく、妻:ゆきの視点からストーリーが進むこと。西洋料理屋の成功に向けて邁進する夫:丈吉だけでなく、彼に振り回されながらも仕事を通じて絆を深めていった家族の姿を描きます。努力とは、必ずしも目に見えた成果を伴うものではなく、日々の生活の中にも確かにあることを、改めて気付かされる作品です。

悲しいできごとがあった人へおくる1冊

事故や訃報、続く戦争など、残念ながら今年もいくつもの悲しい出来事がありました。ご自身の身や、身近にこうした出来事があったかたもいるかもしれません。

そんな悲しい出来事があった方におくる1冊は、「月ぞ流るる」澤田瞳子 著。

舞台は平安時代中期。かの有名な藤原道長が権力の絶世期を迎えている時代です。主人公は、女性のための歴史”物語”(当時は歴史的事実を描く書物は教科書的な史書が一般的)を描いた「赤染衛門(965?-1041?)」。自身の権力を高めるために、宮中を二分した政権争いを軸に、栄華を極めた平安貴族の裏にあった「哀しき涙」と、その先にある「幸せ」を描きます

栄華を極めた藤原道長の孤独、政権争いに敗れた天皇の身近にあった幸せ。自身がどれだけ平凡で、どれだけ憐れだと思ったとて、その中にある小さな幸せに改めて気づくことができる作品です。

ちなみに、来年2024年の大河ドラマは「光る君へ」の主人公:紫式部も晩年の姿で登場します。大河ドラマの事前勉強にもおすすめしたい一作です。

2023年 つれづれBest

続いて、今年紹介した作品を振り返って、個人的な今年のベスト3をご紹介します!
※この前にご紹介している3作は除いたランキングです

第3位 老臣が次の世代に託すもの

佐々木功 著「織田一 丹羽五郎左長秀の記」

個人的に多少は戦国時代に詳しいのですが、その中でも扱いが難しい(というかあまり目立たない)、織田信長の家臣:丹羽長秀が主人公かつ、不可解な行動の多かった丹羽長秀の晩年にフォーカスをあてた異質な作品です。

何も持たない人物が新しい時代を切り開いていく華々しい歴史小説とは異なり、権力も武力もありながら絶対的な生きる指針を亡くした老臣(丹羽長秀は当時47歳)が、新しい時代を迎える時、次の世代に託したものとは何だったのかを描きます。

道なき道を切り開いた華々しい歴史小説ではなく、どのように人生を畳んだのかを描く他に類を見ない作品として、つれづれの個人的な今年のベスト3にランクインしました!

第2位 誰をも等しく照らすキャバレーの光

高殿円 著 グランドシャトー

個人的には珍しく書影でジャケ買いした作品で、書影に負けず劣らず中身もとても面白い作品。舞台は高度経済成長期の大阪。令和の現在は失われてゆく「キャバレー」で働く2人のホステス「不動のNo.1 真珠」と「型破りなNo.2 ルー」を主人公として描いた物語です。

いわゆる水商売を題材としながらも、底抜けに明るいことが特徴な本作は、変わりゆく時代と変わらないものを鮮やかな対比で描き出します。キャバレーを満たす「にせものの光」は何を照らし、そして変わりゆく時代で人が求め続けた普遍的なものとは何だったのか。家族が集まる年末年始こそ、読んで頂きたい一作です。

第1位 主従を越えた最強のふたり

つれづれ
つれづれ

今年のNo.1は、つれづれの中ではぶっちぎりのトップです!

まいまいつぶろ 村木嵐 著

舞台は江戸時代中期。江戸幕府 中興の祖:徳川吉宗の長男ながら、生まれつきの障害により会話・筆談が難しい徳川家重と、彼と唯一コミュニケーションが取れた小禄の武士「大岡忠光」の絆を描いた作品です。将軍と直に会話ができる唯一の家臣だからこそ、忠光に向けられる容赦のない嫉妬に政略。口のきけない将軍と後ろ盾のない小禄の忠光は、多くの逆風の中、いかにして第九代将軍として、その治世を務め上げたのか。

ストーリーだけでも十分に面白いのですが、その構成も妙味が効いており、家重と忠光は二人の間でしかコミュニケーションが取れないことから、この世界観を壊さないように2人以外の第三者視点で物語が進んでいきます。視点人物が頻度高く変わるため読みづらさを覚える一方、非常に読み応えのある一作です。

人が人に想いを伝えるということは、どういうことなのか。自由に会話ができないからこそ、優しく相手を想う奥ゆかしさに、胸がじんわりと暖かくなる作品です。

また本作は、24年1月17日発表の直木賞候補作にも選出されており、世間的にも注目度の高い一作です。

最後に…

2023年にこのブログで紹介した作品を中心に、今年を振り返りながらおすすめ作品をご紹介しました。

今年は特に時代が幅広く、時代や環境・身分は違えども、実在の人物・出来事だからこそ、その人生や喜怒哀楽に共感できることが多いと思います。1冊でも気になる小説がありましたら、ぜひ読んでみてください。

ちなみに、個人的なベスト3以外に、特に今年閲覧数の多かった作品はこちらです。よろしければ、こちらも御覧いただければと思います。

ここまでお読みいただいたみなさまがよいお年を迎えられますように。

タイトルとURLをコピーしました